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ツリー Lion Heart 5章 ツリー
2000年12月
海亜 作


『あの・・・私。倫子さんに連絡するの遅れちゃって。
だから滝沢くんに連絡出来なかったの。ほんとごめんね。』
『えっ?なんの事っすか?』
『倫子さんから聞いてないの?』
『はっ、はい。』
『そうだよね。事実が判明したの、さっきだもん。
あぁ、、、ほんと私ってバカ。なんでこう先走っちゃうんだろう・・・。』
『そんな事言ってないで。早く説明してあげたら?
滝沢くん困った顔してるよ。ねぇ?』
二宮が俺に尋ねた。
『うっ、うん。』
『あっ、そっか。ごめん。』
それから説明してくれた。

『なんだ・・・そういう事だったのか.。』
『ほんと、色々と・・・ごめんなさいね。』
『あっ、全然。っていうか・・・ありがとうございます。』
掛けたくても、掛けられなかったという事情を知れて嬉しかった。
だからお礼を言った。
『えっ???』
それに対して不思議そうな顔をしていた。

その時二宮が声を掛けた。
『美亜。タクシー来たよ。』
『うん。あっ、その後、倫子さんとは?連絡取れたの?
って取れてる訳ないよね。そう様子じゃ。』
『はい。』
『じゃぁ、今教えるね。』
そう言ってカバンの中から携帯を取り出そうとしていた。
『あっ、いいっす。』
なぜかそう言ってしまった。
『えっ?あっ、そっ、そう?・・・。』
そう言ってタクシーに乗り込んだ。

そして車の窓を開けて二宮に言った。
『今日は・・・ありがとう。』
少し切なそうな声がした。
『俺も・・・。また連絡するから。』
力強い声で言う二宮。
『・・・うん。』
気のせいか涙ぐんでいた。

そして視線を俺に向けて言った。
『滝沢くん、おやすみなさい。』
『おやすみなさい。』
『和也くんも・・・おやすみ。』
『おやすみ。』
彼女、1人乗せて車は走って行った。
その車を二宮は見えなくなるまで見ていた。
この2人の間には・・・一体なにがあるんだろう。

『お前は?これからどうすんの?』
『あっ、別になんの予定も無いけど。』
『なぁ〜。ラーメンでも食べに行かないか?』
『うっ、うん。』

〜らっしゃい!あっ、毎度〜

『ここのラーメン超〜美味いんだ。俺、醤油。』
『へぇ〜。イイ感じの店だね。俺も醤油下さい。』

『今日、ディズニーランドに行ってたんだ。あいつと。』
二宮が嬉しそうに言った。
『へ〜いいなぁ。楽しかったか?』
『うん。俺もあいつも、はしゃぎまくったよ。ハハハ〜。』
前髪を触りながら言う仕草が照れ隠しのようにみえた。
『いいなぁ〜・・・。』
『あっ、ごめん。俺、嬉しくって・・・つい。』
『いいんだよ。久しぶりに会ったんだよな?』
『うん。半年ぶり。携帯番号も変わってなくて・・・嬉しかった。』
『えっ?』
『ずっと連絡取れなかったって言ってなかったっけ?』
あっ!
その時、思い出した。
以前、二宮が楽屋に来て彼女の事を話してくれた時の事を。

その人とは、もうダメって感じかな。
連絡取れないんだ・・・。もう会う事も無いかもしれない。

 
『じゃぁ、今日は?なんで会えたんだ?』
『5日前に渋谷で偶然会って。その時、約束したんだ。』
『ふ〜ん。』
『あいつ・・・実家に帰ってたんだ。』
『じゃぁ、今は東京に住んでるのか?』
『転勤でこっちに来てる間だけね。』
『それっていつまでなんだ?』
『来年の3月。』
『そっか・・・。』

俺は気になってる事を聞いてみた。
『お前は、あの人の事好きなんだよな?』
『・・・うん。』
『あの人は、お前の事好きなんじゃないのか?』
『・・・随分前に聞いたけど答えてくれなかった。』
『今は?今の気持ちを聞かないと意味無いじゃん!』
『・・・恐いんだ。聞くのが。』
『なんで?』
『また遠く離れてしまうような気がして・・・。』
『でも、また偶然会えたんだよな?』
『・・・うん。』
『もう運命としか言いようが無いじゃん!』
『そうかな?』
『そうだよ。あの人、絶対にお前の事好きだよ。』
『・・・俺、もう1度気持ちを確かめてみるよ。』
瞳を輝かせ、唇をキュッと噛み締めて言っていた。

『あのさ・・・ところで、なんで倫子さんの携帯番号聞かなかったの?』
『ん?あぁ〜なんとなく。』
さり気なく誤魔化した。
『変なのぉ〜。せっかく誤解が解けたのにさ〜。』
『いいんだよ。おっ、来たぞ。』

〜はい、醤油ラーメンね〜

『美味い!まじ美味い。今度、翔くんにも教えてあげようっと。』
二宮は嬉しそうに食べていた。
その笑顔が俺の意地悪心を煽いだ。
『じゃぁ、今日は・・・お前におごってもらおうかなぁ〜。』
『ゴホッ!まっ、まじ?俺800円しか財布に・・・。』
『うそだよ。』
『良かった。ハハハ〜。』
子供のように笑って言った。

〜ありがとうございました〜

『ご馳走様でした。そんなつもりじゃなかったんだけど・・・。』
『あぁ、いいって。そうそう、お前最近曲作ってるのか?』
『うん。“愛する人へ”っていうのを作ってる最中。』
『もしかして・・・彼女に捧げる!みたいな?』
『えっ、うっ、うん・・・。』
二宮は、かなり照れていた。
『相変わらずストレートなやつだなぁ〜。』
『ま〜ねぇ〜。ハハハ〜。あっ、俺こっちだから。じゃぁ。』
そう言って二宮は夜の街へ姿を消した。

倫子さんの電話番号を聞かなかった理由。
俺も運を天に任せ、出逢いたかったのかもしれない。
二宮と彼女。そしてレオンとオンディーヌのように・・・。

―つづく―




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