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ツリー Lion Heart 2章 ツリー
2000年12月
海亜 作


12月5日。
『おはようございます・・・。』
まだ眠い目をこすりながら車に乗った。
『おはよう。あっ、明日はオフだぞ。』
マネージャーの時田さんが言った。
その一言で目が覚めた。
やったー!久しぶりに会える。
俺は嬉しくてたまらなかった。

午前6:00。撮影場所に着いた。
『おはようございます。』
『あっ、おはよう。』
『あれ?なんで椎名さんが居るの?佳子さんは?』
『えっ?聞いてないの?』
『うん・・・。』
『緊急の役員会議があって、今日から10日まで大阪なの。』
『ふぅ〜ん。』
『なんか、来年の新規採用について・・って言ってた。』
『ふぅ〜ん。そうなんだ。』
『でっ、帰って来てすぐ、ダンナさんとアメリカ旅行に行くんだって。』
『ふぅ〜ん。仲いいじゃん!』
『あれ?嫉妬してる?』
『うん。かなり。アハハ〜。』
『笑ってるけど、寂しいんでしょ?』
『うん。かなり。』
『ごめんねぇ〜。佳子さんの代わりが私で。』
『そんな事ないよ。椎名さんも大変だね。掛け持ちでしょ?』
『今は全然、大丈夫なの。コンサートが無いでしょ。』
『あっ、そっか。その節はお世話になりました。』
『いいえ。どう致しまして。』

『ねぇ〜、そう言えば椎名さん趣味で小説書いてるらしいじゃん。』
『えっ?!だっ、誰に聞いたの?』
少し焦っているのか手に持ってたハンガーを床に落とした。
『う〜ん・・・誰だったかなぁ?忘れた。』
『なにそれ〜。』
椎名さんは苦笑しながら答えた。
『今度、ちょっと見せてよ。』
『えー!恥かしいからダメ。』
『えっ?なに?!エッチ系の話書いてんの?』
『違うけど・・・。』
『なぁ〜んだ。残念。』
『えっ?』
『あっ、別に。ねぇ〜、読ませてよ。演技の参考になるかもしれないしさ。』
『う〜ん・・・。じゃぁ、今度ね。感想とか言わないでよ〜。』
『分かった。』
『あっ!もうこんな時間。急がなきゃ!』
『えっ?ほんとだ。ヤバイ!!』
それから急いで衣装の制服に着替え、スタジオに向った。

午前8:00。1回目の休憩。
電話を掛けようと思い携帯を取った。
トゥルルルルル〜トゥルルルル〜
10回程コールが鳴った後、突然ブチッと切れた。
あれ・・・?
再度、掛けようと思い再ダイヤルを押した。
プープープープー
あれ・・・?どうなってんだ?

〜撮影再開します〜

スタッフの声で俺は携帯を置いてスタジオへ向った。
それから休憩毎に電話を掛けた。
だけど相変わらずコールは鳴らなかった。

次の日。
俺はいつもの店へ足を運んだ。

〜いらっしゃいませ〜
『こんにちは。』
『いつもありがとうございます。』
どれにしようかな?
やっぱ・・・指輪かな?
でもサイズが分からない。
本当は何気に倫子さんを誘って
その場でプレゼントするはずだった。
あぁ。。。また今度プレゼントするか。

そして物色する事10分。
光輝く1つの物に目が奪われた。
『これ見せて下さい。』
店員さんは、ショーケースの中から取り出してくれた。
『はい。どうぞ。』
『キレイですね。』
『でしょ?これはね・・・。
LION HEART (ライオン ハート)っていうの。
英語だと“ライオン”だけどドイツ語で“レオン”って読むの。』
『へ〜、そうなんすか。』
『もっと聞きたい?』
『はっ、はい。』
俺は、なぜか興味が湧いた。
強い輝きの中に優しい気品が溢れている。
まるで倫子さんのようだと思ったからかもしれない。


―つづく―




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