[back]

ツリー Lion Heart 1章 ツリー
2000年12月
海亜 作


『あのさ・・・今日何時に終わると思う?』
メイク直しの最中、佳子さんに聞いてみた。
『さっき監督が後1シーンで終わりって言ってたわよ。』
『じゃぁ・・・後1時間くらいかな?』
『そうね。そんなもんかしら。』
よっしゃー!心の中でガッツポーズをした。
自然と顔がニヤけてしまった。
『まなと君!次はシリアスなシーンなんだから、そんな顔しちゃダメよ。』
『は〜い。』

〜撮影再開します〜

それから1時間後の午後5:00。
予想通りドラマの撮影は終了した。
『お疲れ様でしたー!』
楽屋で帰り支度をしている佳子さんに言った。
『秀くん。どうしたの?そんな急いで。』
『用があるの!じゃ、また明日〜。』
俺は急いで、ある場所へ向っていた。
今朝、佳子さんから聞いた住所。

電車を2回、乗り継いだ。
そこは初めて見る風景。
下町情緒が溢れて、落ち着いた感じがした。

駅のすぐ側にあるケーキ屋さんを発見した。
★wish a message★
誘われるかのように店内へ入って行った。

〜いらっしゃいませ〜

『すみません。ケーキあります?』
『ラッキーですね。後1つでしたよ。』
『あっ、そうですか。』
『メッセージは?どうなさいますか?』
『えっ?』
『お客さん知らないんですか?』
『えっ?どういう事ですか?』
『ほら、そこに書いてあるでしょ?』
店先に貼ってあるチラシを見た。
あなたの伝えたい一言?

読んでる側で隣に居た太ったおばさんが話し掛けてきた。
『ここの店の噂があって・・・あれ?あんたどっかで・・・?』
俺に気付いたのか顔をジーッと見てる。
『まっ、いいわ。とにかく、このメッセージチョコに願いを書くと叶うの。』
『へ〜、そうなんすか。』
『私はね・・・。』
そう言って書いてるチョコレートの板を見せてくれた。
★痩せますように★
『そんな必要もないんだけどね。アハハ〜。』
そう言って豪快に笑った。
『はぁ・・・』
苦笑しながら答えた。

俺は・・・何て書こうかなぁ。あっ!!
今の2人にとって大切なメッセージを思い付いた。
そして、一文字一文字、丁寧に書いた。
『これ、お願いします。』
『???』
店員さんは不思議な顔をしてる。

〜ありがとうございました〜

もし、これを渡せなかったら・・・。
やっぱり、あの時聞いておけばよかったなぁ。
少し悔まれた。でも、会える。絶対に会える。そう信じていた。

午後6:00。倫子さんの家の前に着いた。
でも誰も居ないのか真っ暗。
今、来た道をトボトボと歩き出した。
俺・・・なにやってんだ?
家まで行ったりして・・・。
家族の人が驚くのも考えずに・・・。
それに・・・倫子さんの事も。
だた会いたい一心でここまでやって来て・・・バカみたい。
とにかく居なくてよかった。
あっ!でも・・・居ないって事は。

そして公園で倫子さんを待つ事にした。
待ってる間、様々な出来事が思い出され胸が熱くなった。



―つづく―




[top]