[back]

笑顔の行方 U____ 第2章
2001年1月
しいな 作


「帰っちまったよ。せっかく久しぶりに会えたのに・・。」
オレこと滝沢秀明は、窓から外を見る。
雨が降ってる。
「しょうがないじゃん。まさか、泊まっていくわけにもいかないでしょ。」
翼こと今井翼は先輩のコンサートのビデオを見ながら ノートにメモしてる。
「翼はさ・・。日向さんのことどう思う?」
オレは、柿ピーを食べながら相棒に聞いた。
「オレ?オレは、姉貴みたいなもんかな?さっぱりしてるし、面白いしさ。 おまけに料理も上手い。」
褒めちぎってる。そう・・料理はうまいよなぁ・・。
だから、ラーメンばっかじゃなぁ、って呼んだわけで。
ってそういう話しでなくってさ。
「何だよ。滝沢・・もしかして日向さんのこと好きなの?」
オレは何にも言わない。
オレの表情で翼は察したみたいだった。
「ふーん・・。じゃ、オレがお邪魔だったんだ?」
と、にんまりとオレを見ながらそう言う。
「何言ってんだよ。んなわけねーじゃん。」
オレが照れると、翼はさらに突っ込んでくる。
「いつから?もしかして初めて会ってから?」
「そーかもしんない・・。キョーレツな印象だったから・・。」
一目惚れの多いオレ・・。
初めて酔った彼女を家に泊めてから・・その時から好きだったのかもしれない。
いまでも・・思い出す。あの時の表情とか・・下着姿とか・・。
(やべ!オレ・・何を想像してんだろ。///)
「でも・・日向さんは・・。」
オレはため息をつく。
どうみたって子供扱いだもんな・・。
そんなオレを見ていた翼は、さらに容赦ない一言を付け加える。
「格好もラフだよなー。気にしてないって感じ。化粧っ気もまるでなし。」
ぐさっ!っと音が聞こえそうな程オレはショックを受ける。
それでも、きれいだけど・・
すかさずフォローをするがオレには届かず。
床に突っ伏しているオレに翼は「あははは!」と笑いながら声を掛ける。
「何、落ち込んでんの?当たり前だって!まさかデートじゃあるまいし・・。」
その言葉で少し立ち直る。
でもなぁ、会うときはいつもラフな格好だし、化粧もナチュラルメイクっていうか・・。
いや、考えるのをよそう。暗くなってくる。
「まぁ、プッシュプッシュでしょ。KONISIKIさんも言ってたじゃん。」
なんだよ・・。ワイドショウでも見たんかい?
「プッシュねぇ・・。」
今度誘ってみようか?でも・・何て言おう。
いつ会えるかもわかんないしさ。日向さんて鈍感そうだしね・・。
「オレ・・風呂入ってくるわ・・。」
「おう!・・ま、元気だせよ。」
慰めて貰った。嬉しいような悲しいような。
翼はそう言うとゲームを繋ぎだしてやりはじめた。
オレはシャワーを浴びて湯船につかる。
そして、彼女のことを考える。
どうか・・振り向いてくれますように・・。


「はぁ?合コン?いつ?」
次の日、私は会社のスタジオ内で友人からのメールを受け取る。
内容は「合コンあるから、行こうねー。」というものだった。
さっそく、携帯にTELする。
『 今日の夜。空いてるよね?』
だから、昨日の昼間 、今日の仕事の終わり時間を聞いてきたのか・・。
確かに急ぎの仕事はないけど・・。(下っ端だしね。)
私は、彼から預かったMDを見つめる。
「私、格好も何もかもめちゃくちゃラフだよ。ほとんどすっぴんに近いし。」
そう、下地とファンデだけの超ナチュラルメイク。
『大丈夫、うちの美容室予約いれといたから、担当はア・タ・シ。』
あっけらかんと彼女は笑った。
「はい?!」
『服も用意したし、バッチリ×バッチリ。万事まかせなさい。』
これはもう・・断るなんて許さないという雰囲気だな・・。
私のため息が聞こえたのか・・。
『いい加減、彼のことは忘れて、新しい恋を探しなさい。いい男見繕っといたか ら。
とにかく、仕事を早く終わらせて速攻うちに来るように。じゃね。』
忘れるも何もあいつの事は吹っ切れてるってば!って言おうとしたけど、無駄だ った。
そのまま・・切れてしまった。
はぁ・・。合コンねぇ。
私はヘッドフォンを付けてキーボードの前に座る。
どっちかっていうと・・行きたくない。
興味がわかない。
ふと・・MDが目に入る。
滝沢くんの顔が頭に浮かぶ。
ああ・・仕事中に出てこないで・・集中出来ない・・。
そう・・預かったこのMDの方がすんごく興味が沸くのよ。
私は重ーいため息をついた。



 友人の名前は片桐翔子という。
青山の一等地に店を構える有名美容室に務めていて、 カリスマといわれる美容師として雑誌なんかで活躍している。
その彼女がまさに伸びすぎたセミロングの私の髪にハサミをいれる。
もう、とっぷりと日は暮れていて8時から近くのレストランでディナーなんだっ てさ。
あと、2時間もない。
間に合うんだろうか・・。
「しかし・・まぁ、男がいないとこうも変わるもんかしら?その分じゃ、最近 スカートも履いてないんと違う?」
彼女は馴れた手つきで素早くカットしていく。
「ぴんぽ〜〜 ん♪ 」
大正解。ご名答。ビンゴ!
仕事できっちりの時もパンツスーツだもんね。
「ぴんぽーん。じゃなくてぇ。」
「まぁ、伸びてきたから、ちょうど良いけど。でも、合コンはやめてよ。 そんな気分じゃないから・・。」
私はある女性雑誌のグラビアに目をおとす。
「とにかく!連れて行くからね!何?年下好みになったの?」
雑誌の両開きの部分を見て、私を鏡越しに見る。
私は咳き込む。
「何・・咽せてんの?まさか・・好きな人でもいるの?」
グラビアその見開いた瞳に吸い込まれそうになっている私に彼女はそんなことを 聞いてくる。
さらに・・咽せる私。
「年下?マジ?本当に?」
驚いて、ハサミを振り回す。
危ないっての。
「好きっていうか・・気になるあいつかな・・。」
また、ある女性誌の煽りを引用する。
まさか・・この雑誌のモデルだとは・・気づかないみたい。
(普通は気づかないよね。)
そう・・最近・・気になり出したのは本当。
特に彼の家に行くとあの時のことが脳裏をよぎる。
これって・・滝沢くんのことが好きってことなのかな・・?
「ふーん。つき合い悪いと思ったらそういうことなんだぁ。でも、年下はやめと きなよ。やっぱり、見た目も良くて、稼げる男が一番よ。嫌でも連れていくからね。」
見た目と仕事もできるってのは・・当てはまってると思うんだけどな・・。
ああ・・かったるいなぁ。
でも・・翔子の顔も立てないと・・。
たまには・・良いかぁ。
それでも・・腰が重い。
「行くだけね。参加するだけ。」
ふと、彼の言葉を思い出す。
羽目外ずしすぎないでよ。
今でも・・あの時の寝顔とか・・あれとか・・これとか・・。思い出しちゃう んだよねぇ。
優しい色をたたえる彼の瞳。
思わずにやける。
「薄気味悪い笑いして・・気持ち悪いなぁ・・。さっ!メイクするよ。」
その言葉で我に返る。
そんな・・人を危ない人間みたいに言わないでよ。
それから、一時間で私は彼女の手によってみるみる変わっていったのだった。
やっぱり、腕は確かなのよね、と実感した私だった。

―つづく―


[top]