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リース Lion Heart 1章 リース
2000年12月
海亜 作


サンタととなかい


12月に入って久しぶりの晴天。
私は朝から洗濯をしていた。
♪真っ赤なお鼻の〜トナカイさんは〜
なんて鼻歌を歌いながら。

『ったく、いまどき2槽式なんて家くらいだよぉ。ハイテク時代に。
なんて言ったら罰が当たるか。ごめん、ごめん。』
と独り言を洗濯機に向って言っていた。

その時、携帯の着メロ♪もう君以外愛せない♪が鳴った。
あっ!滝沢くんだ!
音を聴いただけで誰か分かるように設定したから間違いない。
画面を見た。
やっぱり、滝沢くんだぁ〜。ルンルンル〜ン♪
“倫子さんの声が聞きたかったんだぁ〜”なんて言うのかな?
それとも“会いたいよ・・・”とか“寂しいよ・・・”なんて可愛い事を・・・。
1人で、そんな事を考え自然と顔がニヤけた。

すると、隣でお風呂掃除をしていた、お母さんが言った。
『早く出ないと切れちゃうわよ。』
『あっ、そうだよね。』
急いで携帯を取ろうと手を伸ばした。
その時、
ポチャン!
携帯がグルグル渦を巻いてる水中の中に。
洗剤が手に着いててツルっと滑ってしまった。
携帯ストラップだけが浮いている。
わぁ〜、シンクロみたい。
なんて呑気に言ってる場合じゃない。
慌てて携帯を拾い上げた。

『もしもし!』
と言ったけど、うんともすんとも言わない。
うそぉー!
ショックのあまり携帯を床に落としてしまった。
更に追い討ちを掛けてしまい携帯は・・・再起不能。
洗濯機にあんな事言ったから罰が当たったのかな?
でも、丁度変えたいと思ってたから良かった、良かった。
なんて、その時は思っていた。
それがこれから起こる悲劇の幕開けになろうとは・・・。

翌日。仕事の帰り。
私はJ−フォンの店へと足を運んだ。
『あの・・・。これ直ります?』
店員さんに聞いてみた。
『あぁ、これは・・・もう無理ですね。』
『そうですか。分かりました。』
『新しい携帯をご購入なさいますか?』
『あっ、結構です。』
『では、こちらの携帯は・・?どうなさいます?』
このまま持っていてもゴミになるだけだしなぁ。。。。
『じゃぁ、処分して下さい。』
お店の人、快く言ってくれて助かったぁ〜。

そして次に行った先は原宿にあるドコモショップ。
『あの・・・。携帯下さい!』
入口近くに置いてあった滝沢くんのパンフレットを手に取った。
そして店員さんの目を盗んで2冊カバンの中に入れた。

帰りの電車の中で早速電話を掛けようと思った。
でも・・・よく考えたら番号が分からない。
前の携帯に全て入力していたから。
あぁ、、、どうしよう。こんな事ならメモを取っておけばよかった。
メモ?あっ!
手帳に走り書きしたのを思い出した。
以前、佳子さんに聞いた滝沢くんの携帯番号。
パラパラと急いで紙を捲った。
よかったぁ〜。残ってた。

トルルルル〜トルルルル 何十回コールしても出ない。
あれ?おかしいなぁ。
収録の最中なのかなぁ。
あっ!そうだ。メールを入れればいいんだぁ。
実は今までメール対応の機種じゃなかった。
分厚い手順書を見た。
さっぱり分かんないよ〜。
取り合えず家に帰ってからチャレンジする事にした。

【番号が変わりました。090−○×・・・・倫子】
よし、これでバッチリ!
後は連絡が来るのを待つだけ。
でも、いくら待っても電話は掛かって来なかった。
メールも・・・受信箱は真っ白。
なんで掛かって来ないんだろう。
昨日の電話の事が気になって眠れない。

そして再度、電話を掛けた。
夜中の2時。
こんな時間にゴメンねぇ・・・。
と心の中で唱えながらコールをずっと聴いていた。
でも、このまま永遠に鳴っていそうな感じ。
私はコールを止めメールをした。
【倫子です。連絡待ってるね。】
送った事で安心したのか、いつの間にか眠っていた。

朝、目覚めて急いで携帯を見た。
でも・・・日付と時刻が表示されてるだけ。
どうしたんだろう?
電話やメールが出来ない程、忙しいのかな?
でも・・・。
私は滝沢くんが言ってた言葉を思い出した。

“倫子さんも携帯メール対応にしなよ〜。
そしたら、いつでも連絡出来るじゃん!”


変だ。絶対に変だ。
あっ!もしかして・・・。避けられてる?
私は不安で胸が押し潰されそうになった。

―つづく―




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