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聖夜にお願い
Christmas Present
2000年12月
しいな 作



窓の外は、雪がちらほらと降っている。
東京にしては例年より寒くて、まさにホワイトクリスマス。聖なる夜。
今日は12月23日。クリスマスイブ×イブ。
「どうしたのさ?滝沢くん。」
今日の主役、クリスマスイブが誕生日というめでたい男。
嵐の相葉ちゃんこと相葉雅紀が声を掛けてきた。
「ああ?何だよ。」
ぼーっと外を眺めていたオレは振り向く。
「せっかくの鍋パーティなのにちっとも楽しそうじゃないね。」
オレ、滝沢秀明は、主役の相葉ちゃんと今井翼と他の嵐の面々と一日早い、
相葉ちゃん誕生日おめでとう鍋パーティ≠フ真っ最中なのを忘れていた。
(スケジュールの都合で集まれるのが今日だけだったりする。)
「ああ、悪りぃ、だって鍋奉行がいるからさ・・。」
鍋奉行とは、嵐のリーダーの大野くん。
マイペースな彼にしては珍しく切り盛り している。
いつもはいろいろ世話するオレだけどなんだかぼーーっっとしてしまう。
「でもさ、今年滝沢くんは欠席かと思ったね。」
普段、嵐の中で一番に頭の回転が早いと豪語する天然の相葉ちゃんはそう言って 皿にクリスマスケーキを乗っけてパクついている。
「いや、そのつもりではいたんだけどさ・・。
そのケーキ、彼女の働いているレ ストランで作ってるのなんだよね。」
オレはケーキを指さして相葉ちゃんに言った。
「へー。ってことは、忙しいじゃん。彼女さん。」
相葉ちゃんは「上手いよ。」と言ってさらにモグモグと食べてる。
「本当なら、今年は男ばっかりじゃなくてさ、彼女と過ごしたかったね。」
外を眺めながら、彼女の顔を思い浮かべる。
隣の相葉ちゃんを見る。せっかくの誕生日なのにごめんな・・。
少し申し訳ない気持ち。
「まだ、間に合うんじゃない?」
相葉ちゃんがそうオレに向かって言う。
フォークで時計を指さす。針は、11時30分。
「いや・・でも・・いくらなんでも・・マズイっしょ。」
すると相葉ちゃんは、クククと笑って、
「いいんじゃないっすか?またいつでも集まれるでしょ。」
オレが、行くかどうか迷って考え込んでいると、
「ほら!滝沢くんらしくないなぁ、急がないと時間ないよ!」
ポンと肩を叩かれる。
「サンキュ!相葉ちゃん。今度ゆっくり会おう!奢るよ。」
オレは立ち上がって。相葉ちゃんのへやを出ようとする。
「滝沢?急いでどっか行くの?」
翼が声を掛けてきた。オレは振り返って、
「彼女に会いに行ってくる。悪いけどまた今度な?」
「おう!徹夜すんなよ!あ、これ持って行けば?」とある物をくれる。
サンタの帽子だった。何に使うんだよ・・こんなもん。
「クリスマスと言えばサンタでしょ?サンタッキーなんてねー。」
オレは、「はいはい。」と笑って受け取りジャンバーのポケットに入れた。
マツジュン、翔、大野くんにも謝ってオレは、中華料理屋さんを営んでいる相葉 ちゃんの家を後にして 彼女の住んでるアパートに向かった。

                    

外はマジ寒くて雪が舞っている。電車は何とか正常に運行されてるみたいだ。
終電に間に合って良かったなぁ。もう・・時間がない。
オレはドアの前でそわそわしている。駅や立ち並ぶ店はすっかりクリスマスムー ド。
雪がさらに雰囲気を高める。
彼女の家に急いで走っていく。息が白くなる。
見上げると・・明かりはついてない。
「まだ・・帰ってきてないかぁ。」
ドアの前にもたれてる。こんな時こそ合い鍵をもらっとくべきだったなぁ。
(オレは、渡してあるのに・・。)暫く時計を見つめる。
あと10分でクリスマスイブ。何となく翼がくれたサンタの帽子を被って、おも わず・・歌ってしまう。
「きっと君は来ない・・ひとりきりのクリスマスイブ・・。」
うわぁ・・空しい・・寂しい。オレはしゃがみ込んだ。
そんなときタンタンと階段を上って来る音が聞こえる。
彼女だ。顔が見える。オレは名前を呼ぶと君はオレに気づいた。
「秀くん?どうしたの?」
走り寄って来てそうオレに近づいて言った。
おまけにサンタの帽子を指さして驚いた表情でめをまるくする。
「おっす!いや・・まぁ・・。サンタ参上ってことで!」
立ち上がってジーパンに手を突っ込んで上を見上げる。
なんと言っていいものか・・。面と向かってなんて照れる。
「相葉くんの誕生日&クリスマスパーティじゃなかったっけ?」
君はオレにそう聞いてくる。
オレはドアにもたれていた身体を起こしてそっと彼女を抱きしめた。
「サンタ自身がプレゼントです。なんてね・・。会いたかったからさ・・。」
身体を放すと君はオレを見上げる。にっこりと笑ってる。
「私も・・。でも、仕事だったし無理だと思ってたからすごく嬉しい。」
心から喜んでくれてる。来て良かったなぁ。
オレも自然に笑顔になる。
「あっ、寒かったでしょ?待っててね。サンタさん。」
君はカギを出してドアを開ける。何度も入ったことがある部屋。
少し違うのは、ドアの前で君を待っていたこと。
早く帰って来ないかな・・?
なんてソワソワしながら待っていた。そんな気分もたまにはいいね、なんて思っ た。
君もオレん家で待っているときこんな気分なんだろうか。

                    

 君は温かい紅茶を入れてくれる。
「相葉くんに悪いことしちゃったねー。今度うちに呼んでご飯でも食べてもらお うか?」
オレは頷いて紅茶を飲む。
そんなとき時計が0時になる。
「メリークリスマス♪ 」とお互いのカップで乾 杯。
で、相葉ちゃんにもおめでとうのメッセージをメールで送る。
クリスマスかぁ。もうドラマの撮影も始まってるしなぁ。
また、暫く会えないか・・少し寂しい気分になる。
「今日も早いの?」
君はオレの隣に腰を下ろす。
君も少し伏し目がち。
「うん・・。5時からドラマのロケ・・。」
「じゃ・・!もう寝ないとだめじゃない?用意しないと。」
君がそう言って立ち上がろうとするのを両肩を掴んでオレは止める。
「秀くん?」
彼女は不思議そうにオレを見つめる。
オレはごろんとソファに横になる。
そして頭は彼女の膝の上。(腿の上とも言う 。///)
「なにしてんの?!もう!」
さっきの沈滞ムードが一転。良い雰囲気になる。
オレの上空に君の顔がある。少し笑っている。
「このままで居たいなぁ。」
そうぼそっと言うとオレは目を閉じる。
君の冷たい手がオレの髪を撫でる。ひんやりとして気持ちいい。
「寝ちゃった?」
オレは狸寝入りする。・・だってさ、心地よかったから・・。
暫くその状態のあと、薄目を開けてみる。
その直後、唇に彼女の柔らかな感触が・・そして目を閉じた表情が近くにある。
一気に体温急上昇。顔が熱くなってくる。
それに気づいた君は舌を出して笑った。
「やっぱ起きてたんだ?さてっともう寝よう?」
その言葉でオレは彼女の膝(腿?)から起き上がる。
「こんなことされちゃ・・寝れないじゃん。」
まだ動悸が収まらないオレは、恨めしそうに君を見つめる。
君はそんなオレを見て指で最近出来たばかりのニキビをちょんと触る。
「徹夜はお肌に悪いんだよ。ね!」
そう言うと君は寝室に入っていく。
あーあ、せっかくのクリスマスイブなのに・・。
でも夜を一緒に過ごせたのは 良かったんだけどね。
でも・・寝れるかな?君が横にいるのに・・。
「オレ・・ここで寝る。やばいもん・・やっぱり・・。」
「えーーっ?せっかく一緒にいるのに・・。サンタさんがプレゼントなんでしょ ?」
お気楽な君はそんな事を言う。襲っちゃうよ・・マジで。目で訴える。
君はじーーっとオレを見つめる。だから・・マジやばいんだって!
「じゃぁ!襲っちゃえば?」
「なっ・・何いってんの?」
声がひっくり返る。さらに心臓バクバク。
でも・・そう言われちゃうと そんなことも出来ないわけで・・。
君はにっこりとオレ専用のパジャマをくれる。(おまけにサンタの帽子まで・・ 。)
いつの間にこんなものを?(だっていつもパンツ一丁だし・・。)
オレ達2人はベットに入って寝る。
「おやすみ〜♪」
そう言った途端、君はオレの胸にしがみついてくる。
数分後・・君の安らかな寝息が・・。信じらんねぇ。
オレがこんなにドキドキしてんのに・・。どうするよ?!
目が冴えちゃって眠れませーーーん!!(泣)サンタにお願い!
来年こそは・・オレと彼女にクリスマスの甘い夜をプレゼントして下さい。

                   

 結局、オレは一睡も出来なかった。(ため息・・。)
何とか彼女のしがみつき攻撃から逃れたオレは朝の4時半に解放された。
ふと、寝ぼけた君が「いってらっしゃ・・い。」と呟く。
オレはそんな君に「行って来ます。」と優しくKISSをする。
そのまま君は深い眠りに落ちたようだった。(人の気も知らないで・・。)
その後、彼女の部屋からロケ現場に直行。
「あーーーっ・・。滝沢くん・・寝てないね・・。」
仲の良いいつもヘアメイクしてくれる、メイクさんにそう言われた。
「また、新しいニキビ出来てるよ!気をつけないと。」
と忠告される。
「あ"ーーい。」
オレはぼーーっとしながらそう答える。(さすがに二日続きの完徹は辛い。)
おまけに眠気が・・。やばい・・。サンタさんにもうひとつお願い。
睡眠時間を下さい・・。(笑)


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