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涙のあとは 最終章
my brother
2000年10月
しいな 作


「あの・・俺・・蒔さんのこと好きなんだ。」
どきん
心臓の音が跳ね上がる。
翼くんが私の方を向いてそう告白する。
会って、2,3週間だよ?あっ・・でも時間の問題じゃないよね。
「会って、短いけど真剣だから。つき合って欲しいんだ。」
わっ・・・!
華奢な翼くんに抱きしめられる。少し香水のにおいがする。

「ダメですか?俺じゃ頼りないかな・・。」
「そんなことない!!私の方が・・相応しくないよ。年上だし、翼くんは人気者だし。」
少し抱きしめられた腕がゆるむと、今度は肩を掴まれる。
「芸能人の今井翼じゃなくて、1人の男、今井翼として 、蒔さんのことが好きなんだ。
年だって3歳だけでしょ?関係ない。」
せつなそうに私を見つめてる。
「ありがとう・・。でもきっと迷惑かけるよ。あいつのことまだ解決してないし・・。」
「そんなこと聞いてるんじゃないんだ。俺のことどう思ってる?迷惑?」
そう聞かれて・・私の気持ちは・・。翼くんを・・。
「好き・・。」
見つめられて、ドキドキしてる。体中が熱くなってる。
呟く唇が震える。
「大好き。」
確信して答える。
「本当に?」
真剣に顔を覗き込んでくる。
その表情が色っぽくて。私は呼吸が苦しくなる。
頷くと・・。彼は嬉しそうに満面の笑顔になる。
そして、気が付くとすぐ目の前に彼の顔がいつの間にか近づいていた。
彼の唇が何秒か私の唇に重なる。
そのまま、私たちは暫く一緒に公園で、過ごした。



その後、急速に物語は展開していく。
私と翼くんは半ばそれが終わったあと力が抜けた。
「は?妊娠?誰が・・?」
私は友人の柊麻美の言葉に耳を疑う。
「あたし・・。あの・・洋介の子なんだよ・・。」
「いっ、いつの間に?あんた別の男とつき合ってなかった?」
私と別れたあと、洋介は麻美の部屋に転がりこんだらしい。
その数日前に別の男と別れた麻美は思わず同情してしまったらしい。
(同情するかな・・普通)
それが、段々と好きになっていって本気になってしまった。
「で、どーするの?」
「産むつもり。」
決心したらしくきっぱりと答えた。
彼女は大学を休学して子供を産むらしい。
一方、男の方は・・いままでつき合って来た女と手を切っているらしい。

「洋介?」
「おう・・!」
会ってみると・・なんだか丸くなったような気がする。
「あの時のお前の言葉・・思いだしたよ。相応しい相手ってのがさ・・。
あいつなのかなってさ。丸くなっただろ?」
「うん・・。」
洋介は今年大学卒業だ。就職活動を本腰入れてやる。と胸を張っていた。
父親になるって自覚があるんだって。180度変わっちゃった。


「何だかねー。話が早すぎて付いていけないんだよね。」
私がポツポツと喋る。近くにいた彼がすかさず返す。
「こじれるよりいいじゃん。で?なんか問題でもあるの?」
「ないけどー。こんなに上手くすんなり行くと思わなくて・・」
ここは、私の家。家族が旅行に行ってるのをいいことに遊びにきている。
居間で彼は私がとっておいたドラマのビデオを見ている。
私は彼とこれから来るお客さんのために料理を作っている。
「でも、これからずっと2人のことだけ考えていればいいんだからさ。」
彼はテーブルにお皿を並べていく。
「うん、そだね・・。」
ピンポーン。玄関のチャイムが鳴る。
「はいはーい!」
お客さんはカップルでいつもデートは一緒。
翼くんのJrの親友とその彼女だ。
私たちは明るく2人を出迎えた。 いつまでも2人で仲良くしていますように・・。



― FIN―


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