[back]

Kissの奇蹟 第2章
a miracle kiss
2003年7月
しいな 作


タッキー&翼としての初コンサートがはじまってる。
その後はドラマのクランクイン。
しばらく会えなくなると思っていつもの和ちゃんとの散歩コースで 会おうって事になった。
オレは・・彼女と出会ってもうすぐ1年半年。
彼女が事故で亡くした恋人を忘れるまで待とうかと思っていた。
でも・・桜の中に佇むさくらさんを見てどうしても言いたくて告っちまった。
名前通りの桜の中にいる彼女がすごく愛おしくなって・・。
オレにしては我慢したほうだと思うんだけど。
言わずにはいられなかった。
肝心な返事は聞けなかった。
オレの事をどう思ってるんだろうか・・そういう風に見れないって言ってた。
これから・・どうやって彼女と会えばいいんだろ。
嫌われたかな・・彼の事思い出させてしまったみたいだ。
辛そうな顔・・あんな顔をさせたかったわけじゃない。
救いは・・和ちゃんがいてくれることか・・。
あの子がいると・・自然にいられるっていうの?
オレが子供好きって言われればそれまでだけどさ。

車に乗ってエンジンを掛けて土手の道をゆっくり走っていく。
バックミラーには3人の後ろ姿が映っていた。
信号機が赤の交差点に止まる。
すこし・・気分を落ち着かせたくてタバコに火を付ける。
すると・・携帯が鳴った。
相手によって音を変えてあるのですぐ誰か分かる。
「もしもし?仁?何?」
信号が青になり発進する。
「滝沢く〜ん・・お腹空いた〜ゴハン〜!」
・・といきなり甘えた声で言われる。
電話の相手は、JrのKATーTUNのメンバーの赤西仁
「いきなりそれかよっ!お前・・メシくらい・・自分でなんとかしろよ。 オレは、お前のママじゃね〜!」
「え〜?お兄ちゃんでしょ?いま、どこにいるの?」
まだ・・寝起きかよ・・ほんとにお子ちゃまだなぁ・・。
まぁ・・こう頼られるのも悪い気はしないんだよな。
「いまは・・車で移動中。っておいっ・・リハには間に合うんだろうな?」
オレがそう言うと「迎えに来て・・お兄ちゃん。」とふざけた事を言う。
「コラッ!・・甘えるのもいい加減にしろっ。最寄り駅で待ってろよ!」
「は〜い!じゃっ☆」
ブツッと切られる。

なんか・・してやられたような気がする。
つうか・・オレが甘いんだよな・・。
オレは、仁を迎えに最寄り駅に向かった。
あいつは、手を振って車に向かって合図をする。
格好は、寝癖を隠すニット帽とヨレヨレのTシャツにジーパン。
胸元にはネックレスが下がっている。
ハザードを付けて歩道に横付けする。
助手席のドアを開けて乗り込んできた。
「うぃ〜っす!」
「おう・・お前・・何か言うことないの?」
オレは、後ろと横を確認してウインカーを右に出して発進する。
「えっ?んん〜っ。ちょっと髭が伸びてますぜ・・旦那。」
「ちっげ〜よっ。良いけどなっ。別にっ。」
と大げさに口を尖らすオレ。
「もぉ〜冗談ですよっ。サンキューっす!マジ・・遅刻しそうだったんで 助かりました。・・はい。」
うなずきながらオレを見る。
「気を付けろよ〜・・イス飛んでくるからな・・。」
と振り付けのサンチェさんの強面を頭に浮かべる。
「あはは・・確かに〜・・ところで・・車の中でタバコ吸うなんてらしくないです ね〜。」
・・と途中で買ったらしいスポーツ飲料をクイッと飲み干す。
「別に・・珍しくね〜よ。。。」
ハンドルを握りながらそうこたえる。
「何か・・あった?」
む・・オレは、答えられずに無言。
「そういえば〜・・さくらさんってコンサート来るんですか?来ても横浜かな?」
ちっ・・感がいいのか・・彼女の名前が出てくる。
「さあな・・お姉さんがオレのファンだけど・・彼女はどうかな・・。」
言いたくもない事を普通っぽくさりげなく言ったつもり。
「ええ?招待すればいいじゃん。あれれ?何か変・・振られたの?」
ムッ・・!としたのが分かったのか・・仁は・・「やべ・・」って顔をした。
オレは・・やっぱり・・振られたんだろうか・・と気分は凹んでいた。
「マジっすか?信じらんね〜・・滝沢くんでも振られるんだ・・。」
「正確には・・返事を貰ってね〜んだよ。はぐらかされたちゅうかなんちゅうか・ ・。」
オレは、タバコを消して灰皿に捨てる。
「やっと・・告ったんだ・・滝沢くんにしては良く我慢したよね。」
赤西は、オレの表情を伺っている。

「ほんとは・・もう少し・・言わないでおこうかと思ったんだけどな。
桜の中にいる彼女がきれいでさ〜・・つい・・ポロッと・・。」
「でもさ〜・・オレ・・絶対・・両思いだと思ってたよ。
2人を見てるといい雰囲気だったもん・・妬けるくらい・・。」
赤西がニヤッと笑う。
「なんだぁ〜?妬けるくらいって・・」
まさか・・仁もさくらさんの事を・・?
「だって・・いっつも遊びに行ってたのに・・滝沢くん最近つれないんだもん。
オレとしては大事な兄ちゃん取られた感じなんだよね〜。」
そっちかよっ!オレは、ガクッとなる。
そ・・そうかな?その割には、結構遊びに来てるような気がするけどな。
悪い気はしないかも。
「お前・・気持ち悪りぃんだよっ。」
なんて・・慕ってくれる後輩に笑いながら言い放つ。
「ひっで〜っ。さくらさんは・・時間掛かるよね〜・・昔のカレ・・ 死んだ人には勝てないじゃん。生きてたら張り合いようもあるけどさ。」
そうなんだよね・・手帳にまだカレとの写真が入ってる筈だ。
会ったばかりの頃・・公園で偶然見た泣き顔は、カレの写真を見てだった。
『死んだカレなんだ・・未練がましいよね。』
なんてちょっと切なそうに言ってた。
『そんな事ないよ。』
ずうっと死んだ人を思い続けてる彼女を抱きしめたくなったのをいまでも思い出す。
「忘れるなんて事・・出来ないのかな〜・・。」
「わかんね〜・・さ・・着いたぞ。」
オレ達は、そのまま駐車場に車を止めてリハーサル室に向かったのだった。
今は、仕事の事を考えよう。
彼女の事は、あきらめない・・あきらめるつもりもない。
相手が死んだ人なら尚更・・オレは、段々と仕事モードに切り替えていった。

つづく


[top]