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君を想うとき・・・ 第15章
we can fall in love
2000年10月
海亜 作


スタジオに入ると佳子さんが居た。
久しぶりに見た顔は・・・不機嫌そう。
私は声を掛けるのを躊躇してしまった。
『あっ、おっ、おはようございます』
『あ〜、おはよう。もう大丈夫なの?』
『はい。色々と心配掛けて申し訳有りませんでした』
『心配したよ〜。凄く。でも、元気そうなんで安心した』
『はい。休んだ分、一生懸命頑張ります』
『無理しないでね。でも、やっぱ倫子ちゃんが居ないとダメね。
忙しいし、寂しかったもん。だから復帰してくれて嬉しい』
その表情は、さっきの顔とは違い嬉しさ溢れんばかりの笑顔だった。
私はその顔を見て涙が出そうになった。
アシスタントとしても、まだまだの私。
それでも必要としてくれて頼りにしてくれてる事が嬉しかった。

『あっ、心配してる人が来たわよ』
そう言った佳子さんの視線の先には・・・滝沢くんが居た。

『もう大丈夫?』
滝沢くんが私の側にやって来た。
この前の出来事を思い出し、ちょっと顔が赤くなった。
『うん。あの時は・・・ありがとね。お陰で救われた』
『全然。俺、不器用だし何て言って言いか分かんなかったから・・・』
ちょっと照れてる滝沢くんを見るのは新鮮だった。

『あっ、言うの忘れてたけどHIDEZOの世話ありがとうございました』
『いえいえ、どう致しまして。また何か有ったら言ってね』
『サンキュー。じゃ、俺これから歌の撮りが有るから行くね』
『うん。頑張ってね。ここで聴いてる』
いつもなら“音程外さないでよぉ〜”なんて言うのに今日は違った。
涙を見せた、あの日から少し素直になった自分が居た。

滝沢くんは、そんな私を不思議そうに見てる。
『何?何か変な事言った?』
『う〜ん。。。今日の倫子さん、素直で・・・恐いっ!(笑)』
『あ〜何それぇー。失礼しちゃうわねっ!もうぅー』
私は口を尖がらせて言った。
『やっぱ、倫子さんは怒ってる顔が1番!』
『ありがと!ってそれ全然嬉しくないんだけどぉ〜。。。』
今度はシュンとした顔で言った。
『あっ。やっぱ、いじけてる顔かな?』
『もぉ〜!じゃあ、このとびっきりの笑顔は?どうかしら?』
そう言って私は精一杯のスマイルしてみせた。
滝沢くんは笑いを堪えながら答えた。
『ぶっ、・・・引きつってる。営業スマイルって感じ』
『じゃぁ、ご指導願います』
そう言うと得意のアイ〜ンをして見せた。
『ぎゃはははは〜』
私は心の底から笑った。
『そう!それ、その笑顔だよ〜。忘れんなよぉー』
『うん。分かった!』
『でもさぁ〜俺。。。泣いてる顔も・・・』

〜そろそろ本番行きます。スタンバイお願いしまーす〜
その言葉の続きは、かき消された。
何が言いたかったんだろう・・・
                                  ―つづく―


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