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君を想うとき・・・ 第12章
we can fall in love
2000年10月
海亜 作


気付いたら病院のベッドの中だった。

私はあの時の事を覚えていない。
でも頭には痛みが残っている。
『痛っ!』
『あっ、目覚めた?』
お母さんが少し安心したように、でも心配そうに私の顔を覗き込んだ。
『うん。私・・・何でここに居るの?』
『あのね・・・』
お母さんは、ゆっくりと話してくれた。

あの日、散歩に出掛けた後、あの男が家に来たらしい。
私の事を尋ねてきて居ない事を感じたら、家を出て行ったという。
何やら不審な事を言っていたので、心配になり家の前で待っていた。
すると公園でHIDEZOの声がしたので急いで行ってみると
ベンチの角で頭を打って血を流してる私が倒れていた。
そして急いで救急車を呼んだ。。。

『HIDEZOちゃんが居てくれて良かった。あの男、犬が苦手でワンワン吠えられて腰抜かしてたの』
HIDEZOが私を守ってくれたんだぁ。。。ありがとう。

あの男は傷害罪で捕まったと聞いて安心したけど、いつまたこんな目に遭うか分からないから
不安でいっぱいだった。
あの男の顔・・・今思い出しただけでも寒気がして震えが止まらない。
『助けて。。。』
病室に1人っきりになり急に心細くなったのか 涙が溢れて止まらなかった。

コンコン!ガチャ。
病室のドアが開いた。
慌しく入ってくる人が・・・
私の側に来て息を切らしながら心配そうに見詰めている彼。
『怪我は大丈夫?』
『・・・うん』
『さっきマネージャーから聞いて。急いで来たんだ』
『・・・ありがとう』
『俺。倫子さんが怪我したって聞いて・・・心臓止まりそうだった』
私は、その言葉を聞いて泣きそうになってしまった。
精神的にも弱っていたから?
ううん。彼が初めて本音を言ってくれたような気がしたから。

詳しい事は佳子さん経由でマネージャーさんから聞いてるはずなのに あの男の事は一切言わない。
それが彼なりの優しさだと悟った。

『目赤いけど・・・泣いてた?』
『そんな訳無いじゃん!・・・』
私は無理に笑って言った。
弱さを見せたくなかった。見られたくなかった。
普段、強い私しか見せた事がなかったから。
そんな私を見て彼は優しく言った。

泣きたい時には思いっきり泣いていいんだよ。

『昔、俺にそう言ってくれた人が居たの。
それまでの俺は男が涙見せるなんて恥かしいと思ってたけど、それは間違いなんだという事を教えてもらった。涙が出るって事は、自分の嫌な記憶や忘れたい過去を全て流してキレイにしてくれるっていう体の本能みたいもんだと思う。だから泣いていいんだよ・・・』

少し潤んでいた。その瞳を見て心の中の叫びが聞こえたような気がした。

俺の前で無理して笑わないでよ・・・寂しいじゃん。

私は我慢し切れずに泣いた。
あの時の恐怖感からじゃなく、彼の優しさに・・・
それから泣き止むまで私の側に居てくれた。
ずっと手を握ってくれていた。
私は、その温かさを一生忘れない・・・。

                                  ―つづく―


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